Thursday 14 January 2016

ゴヤの肖像画展@ナショナル・ギャラリー



去年の年末の話ですが、ナショナル・ギャラリーで開催していたゴヤ展に行きました。


ナショナル・ギャラリー、センスベリー・ウイング


息子を頭からガブガブ食べちゃうサトゥルヌスとか、悪夢系の作品で知られたゴヤですが、今回のゴヤ展、ゴヤの描いた肖像画のみに焦点を当てて集められたもの。肖像画家デビュー初期の作品から始まり、貴族階級、富裕層、王室、軍人、友人達、家族、というテーマ別で各部屋が構成されていました。

初期の絵が飾られた最初の部屋は、上手いなー、でもちょっと固いなー、技術はすごいけど、いまいちゴヤって感じじゃないよね、という絵だったのが、部屋を進むにつれどんどん手がこなれてきて生き生きとした絵になっていくのが面白かった。



The Count of Floridablanca 1783


明らかに 才能があったにも関わらず、ゴヤ、芸大の入試に二度失敗したそうな。それで結局ほぼ独学で絵を学んだらしい。うーん、多分、芸大受験の傾向と対策ってのをやらずに、自分の好きなスタイルで入試に臨んだのが敗因だったのでは、と勝手に想像する。というわけで、初の肖像画のコミッションを受けたのは30代半ばと遅い。上がその初コミッションの絵。左でキャンバスを見せているのはゴヤ本人。作品にさりげなく自分を登場させちゃうあたり、「おれはヤルぜ」的な出世欲とやる気を感じさせる。そして実際、大人気肖像画家となってゆく。


The Countess-Duchess of Benavente, 1785

「 ベナヴェンテ伯爵夫人」。ゴヤ、すごいっ、って思ったのは、人物の着ている服が何で出来ているのか分かる、布のテクスチャー表現の素晴らしさ。何気なく筆を走らせているように見えるのに、ヴェルヴェットの質感や絹の光沢、繊細なレースの質感、まるで触ったら、布そのものの感触があるのではないかと思われるくらいにリアル。絹のシャツなんて、「あー、これは厚手の良い絹だねー。」って、布の重みまで分かるくらい。



それから、ゴヤ、顧客を喜ばせるのにも長けていたのでは?と想像する。上のご婦人、結構ご年配な様子だけれど、適度にシワを省きつつ、ほんのちょっと皮膚をたるませて、年齢を示唆するにとどめているのではないかなー。それでも十分本人と分かるように描いてあると思う。モデルになった人の人柄も、それぞれの肖像画で良く表現されていた。お見事です。それにしてもこの時代のご婦人方の爆発したヘア・スタイル、これが流行りだったんだろうけど…笑える。

これが、顧客ではなく家族や友人といった、 自分に近い人達を描いた肖像画では、シワはシワ、たるみはたるみで年齢そのまんまに正直に表現されてあった。でもそれが返ってゴヤとモデルの親密さを表しているようで、なんだか微笑ましい。そして描かれた人がその分余計に生き生きとして見えた。あと、キャンバスのサイズが、友人達の肖像画ではグーンと小さくなっていた。うん、コスト・パフォーマンスもよぉーく考えていたんだね、ゴヤ。

ところで軍人さん達の肖像画の飾られた部屋に、コリン・ファース並のイケメンさんが居ました。下がそのお方、ニコラス・フィリップ・ガイ(Nicolas Philippe Guye) 。ナポレオンの部下だったそうです。勝手にミスター・ダーシーと呼ばせていただきました。


で、展覧会を見終わったあと、このステキなイケメンさんの絵葉書は無いかなー、とショップを探したのですが、そこには…。



ウエリントン・ブーツでお馴染みのウエリントン公が。



ここにも。


 
 
ここにも。


クッションはいかがですか?



ダイアリーもあります。

ショップはわっしょいウエリントン公祭り状態。 ウエリントン公、スペインに遠征した折、ゴヤに肖像画を描いてもらってたんですね。ゴヤの肖像画家としての当時の人気ぶりが伺えます。しかしウエリントン公が国民の英雄なのは分かるけど…ナショナル・ギャラリー、ゴヤが描いてくれてたからって、どんだけ嬉しがりなん?…ていうか、誰がウエリントン公のクッション買うのかな。

うむ。ナポレオンの部下だった、くだんのイケメン将校が 絵葉書になるわけ無いか。ポジションがまずかったな。

しかしこのウエリントン公てんこ盛り状態、あとで売れ残り在庫の山を抱える事になるんじゃないか、ナショナル・ギャラリー、と、いらぬ心配をしてやる私でした。





 

2 comments:

  1. ウェリントン祭り、すごいですね。
    「ゴム長の人」くらいにしか思ってなかったけど、こんなに人気あるんだ。
    クッションを姑さんへのクリスマス・プレゼントにした人いると思う(笑)。
    あっ、展覧会の方もすばらしかった、特に友人・家族を描いたのが深かったですね。

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    1. このクッション、「貰って困るクリスマス・プレゼント」ベストテンとかあったら、結構いいとこ行くと思うわー。長ぐつ公でフィーバーするのはいいけど、過去の歴史は忘れてイケメンも絵葉書にして欲しかった…。

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