全員集合のカーテン・コール
2014年12月16日(火)
"ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND"
振り付け: クリストファー・ウィールドン
音楽: ジョビー・タルボット
配役
アリス: セーラ・ラム
ジャック: フェデリコ・ボネリ
ルイス・キャロル/ホワイト・ラビット: アレクサンダー・キャンベル
ハートの女王: ゼナイダ・ヤノウスキー
狂った帽子屋: スティーブン・マックレー
芋虫: エリック・アンダーウッド
料理人: クリスティン・マクナリー
魚: トリスタン・ダイヤー
カエル: マルチェリーノ・サンベ
ドン・キホーテの前に、先週は「不思議の国のアリス」を見に行って来ました。一番のお目当ては、ハートの女王のヤノウスキーです。でもチケット発売当時は、まだメイン・キャストの三人しか配役は発表されておらず、この日にヤノウスキーが踊るかどうかは未知数…。 このバレエが初演された時のオリジナル・キャストの日を選べばヤノウスキーに当たるのでは?と読んで買ってみたところ、大当たり。ああもう、ヤノウスキーのハートの女王を生で見る事が出来て、私は思い残す事はありません…。……いや、もう一回、いや、もう三回くらい見たいかも。
自分でも不思議なほど、私はこのバレエが超お気に入りです。イギリスっぽいものが凝縮されていて、登場キャラクターがヘンなのばかり。その奇妙キテレツぶりがツボです。堪りません。それに合わせるように音楽も、普通の調子から、グニャッと空間が歪む様な感じで変調に変化したり、なんだかアリスを観ている二時間半って、まるで自分が万華鏡の中に居るような不思議な感覚です。
幕間の休憩を知らせる斧
帽子屋の目つきがイっちゃってる感じといい、全身をくねらせる芋虫の色っぽさといい、魚とカエルのちょこまかした感じといい、肉屋の料理人が肉切り包丁を振り回す不気味さといい…何もかもがツボすぎる。皆素晴らしい演技と表現でした。他のキャラがヘンの骨頂を極めた演技をする中で、白ウサギだけがすごくフツーで残念だった。技術的には問題無いんですが、私の中の白ウサギ像、イラッチーで神経質で、どこかズレてて何か理不尽、っていう感じが無かったなぁ。これ、もともとエドワード・ワトソンが踊るはずだったのが、リカルド・セルベラに変わり、彼も怪我か何かでキャンベルが代役になった模様。セルベラの白ウサギ、見たかったなぁ。
これだけヘン・キャラがてんこ盛りの中で、ハートの女王は一番光っていました。これが、この間マノンを踊っていたのと同じ人ですか?っていうヤノウスキーの変貌ぶり。凄すぎる。この人一人で舞台をさらって行った感じ。私はもう、笑いすぎで涙流しながら観てました。女の人なのに、
バレエ・トロカデロ・デ・モンテカルロ(男性がクラッシック・バレエを踊るバレエ団) 並みに笑いが取れる人って、他に居ない。
主役のアリスはもともとローレン・カスバートソンだったのが、セーラ・ラムに変更になっていましたが、彼女のアリス、表情がイキイキしてて、動きもシャキシャキしてて良かったです。私の中では、アリスのベスト・キャストかも。
アリス役のダンサーは、全幕、ほとんどずっと舞台に出て居なくてはならず、体力的にすごくキツい役どころだけど、その割にはあんまり報われないなぁ、と思う。ソロやパ・ドゥ・ドゥー もあるけど地味だし、何より他のキャラクターが強烈過ぎて影が薄くなってしまう。題に「アリス」と入っていて、主役のはずなのに、何か気の毒ではある。
このバレエ、それぞれのキャラクターが際立っているだけに、「この役は誰々で観たい」っていう好みが偏りやすいバレエだなぁと思う。あ、アリスとジャックは誰でもいーんですけどね。ヤノウスキーのハートの女王と、スティーブン・マックレーの帽子屋を超えるダンサーは、中々出て来ないんじゃないかなぁ。